75歳の女性。夜間に俳徊することに困った夫に付き添われて来院した。78歳の夫と2人暮らしである。60歳で発症したアルツハイマー型認知症が進行し、最近3カ月はひとりで出かけて自宅から離れた場所まで歩き回り、警察に保護されることが多くなった。俳徊や不眠などの原因精査と治療のため、精神科病棟に入院することになった。本人はほとんど言葉を発せず、意思も確認できない。夫の認知機能に低下は認めない。
適切な入院形式はどれか。
a. 緊急措置入院
b. 措置入院
c. 応急入院
d. 医療保護入院
e. 任意入院
解答:d
d. 「夫に付き添われて来院」「夫の認知機能に低下は認めない」ので、夫の同意取得が可能
毎年のように出題される入院形態。任意入院はどの診療科でも行う普通の入院ということを知っていれば、あとは2つだけ押さえれば攻略完了である。
1. 緊急度・重症度が高く、そのまま放置すると本人や周囲に悪影響を及ぼすほど精神症状がある。→措置入院
2. 本人が入院に同意できないほどオリエンテーションを失っているが、入院に同意してもらえそうな家族はいる。→医療保護入院
それぞれ、夜間帯の受診など何らかの制約があり「とりあえず」入院せざるをえない状況であれば、1.なら緊急措置入院、2.なら応急入院。いずれも「とりあえず」であるため、後日72時間以内に精神保健指定医による「ダブルチェック」で入院判断が再検討され、入院と判断され場合は措置入院/医療保護入院に切り替える。「とりあえず」ではあるものの、入院の判断は患者さんの人権にも関与するため、緊急措置入院および応急入院も、すべての非任意入院(=非自発的入院と呼ぶ)の判断は、精神保健指定医のみがその資格を有する。
a./b. 本人が徘徊等で警察に保護されたタイミングで、警察側が本人の自傷他害のおそれが強く緊急を要すると判断した場合は、(緊急)措置入院の対応となる。「緊急」がつくかどうかは、上記参照。
c. 夫がたとえば来院できないタイミングで、警察から特に保護の必要性があったわけでもなく、何かの拍子で本人だけ受診しており、診察している精神保健指定医が入院が必要と判断しているけれども本人が拒んでいる、といった場合に応急入院になる。(あまりシチュエーションとしては想定しにくいと思われるだろうが、そのとおりである。従って、非自発的入院のうち、応急入院は数としては最も少ない)
e. 本人が入院を希望している場合に限る。(本来は、重症度が高いから入院するのだが、精神疾患は、重症度が高くなるほど入院の必要性を本人が感じられなくなってしまうほどオリエンテーションを失ってしまう。だからこそ、国試の精神科では非自発的入院が必出問題なのである。)