34歳の女性。「誰彼かまわず夜中に電話をする」状態が持続するため、母親に連れられて来院した。2週間前から話している内容がまとまらない、些細なことを契機に笑い出すと止まらないなど、普段とは異なる行動がみられた。睡眠をほとんどとっていないが、本人は疲れを感じていない。親戚や友人の電話でマンションや車の購入計画などを話し、相手が反対すると激しく怒り出すようになった。血液検査、脳画像検査、脳波検査、脳脊髄液検査で異常は認めず、違法薬物の摂取もなかった。
この患者でみられる症状はどれか。2つ選べ。
a. 観念奔逸
b. 反響言語
c. 誇大妄想
d. させられ体験
e. カタレプシー
解答:a, c
b. いわゆるオウム返しである。自閉スペクトラム症や認知症で認める。
d. 自我障害のひとつ。インプット・アウトプットの自制感を失っているために自分の意志ではなく、他者によって自分の言動や思考がコントロールされていると感じる。統合失調症等で認める。作為体験とも。
e. カタレプシーは体がカタくなる、と覚えよう。受動的に取らされた姿勢をそのまま取り続ける。緊張型統合失調症等で認める。
以下、専門医向け。
躁状態の症例である。「2週間前から話している内容がまとまらない、些細なことを契機に笑い出すと止まらない」とあり、精神病症状も伴っているかもしれない。双極Ⅰ型障害と統合失調症は、ここ15年ほどの研究で遺伝的に類似している事がわかってきた。双極Ⅱ型はうつ病と類似していることもわかってきており、国試も今後はⅠ型とⅡ型が区別された出題となるかもしれない。Ⅰ型とⅡ型の区別は理論上は簡単である。(実際は難しいことも多い。)Ⅰ型は「入院を要するほど」の躁状態が一度でもエピソードとして呈すれば診断される。その後軽躁エピソードを含んでいても構わない。Ⅱ型は躁病エピソードはなく、軽躁エピソードのみである。もちろん両者共に抑うつエピソードが存在していることも重要である。