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外見は40歳前後にみえる男性。路上にうずくまっているところを警察官に保護されたが、「自分が誰だかわからない」と言うため、警察官に伴われて来院した。身元がわかるような所持品はなかった。会話は可能で、関西弁を話したが、関西地方に住んだ記憶はないという。外傷はなく、血液検査、脳画像検査、脳波などの身体的な精査では異常はなく、保護されてからの記憶は保持されていた。

この患者でみられる可能性が最も高い特徴はどれか。

a 替え玉妄想がみられる。

b 切符を買うなどの一般的な行動はできる。

c 記憶がないことについて深刻に悩んでいる。

d 抗精神病薬を投与する必要がある。

e アルツハイマー型認知症の初期症状である。

解答:b

解離性健忘では、自分が意識的に関わった記憶(エピソード記憶という)が失われることがわかっており、意識的に関わった記憶があまりにもストレス甚大なため、外に格納して抜け落ちさせることで自己防衛を図る手段と考えられている。
従って、それ以外のbのような手続き的記憶や、問題文にある言語などの意味記憶は障害されないことも特徴である。

解離性健忘の延長線上に解離性遁走がある。解離性遁走は、意識だけでなく自分の「身体」もその場から解離させて、甚大なストレスから物理的にも遠く離れるという自己防衛反応と考えることができる。

a. 替え玉妄想は統合失調症や認知症で認める。カプグラ症候群も専門医レベルだが有名。
c. 「保護されてからの記憶は保持されていた」ことからわかるように、短期記憶は障害されず、失行や失語もない一方、深刻に悩んでいるかどうかは本人次第だ。
d. 治療方針の決定にはまずは十分なアセスメントが不可欠なのでこの手の「実行に移すPlan」系の選択肢は不正解のことが多い。
e. 記銘力低下が初期から認めるので、保護されてからの記憶も失われる。

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