高齢者の多剤処方(ポリファーマシー)への対応として適切でないのはどれか。
a かかりつけ薬局を決めてもらう。
b 類似薬の重複の有無を確認する。
c お薬手帳を持ち歩くように指示する。
d 薬剤相互作用は考慮せずに処方する。
e 病状が安定していれば減薬を考慮する。
解答:d 以下、専門医向け解説
Polypharmacy「多剤併用」は精神科でもかなり問題となっており、保険医療機関では以下の4つの規制で多剤処方をdiscourageするようになっている。
1) 1回の処方において、「向精神薬多剤投与」(抗不安薬を3種類以上、睡眠薬を3種類以上、抗うつ薬を3種類以上、抗精神病薬を3種類以上、又は抗不安薬と睡眠薬を合わせて4種類以上投与)処方すると減算される。
2) 抗不安薬あるいは睡眠薬であるベンゾジアゼピン受容体作動薬を、1年以上同じ内容で処方すると減算される。
3) 抗精神病薬と抗うつ薬に限っては、日本精神神経学会認定専門医であれば研修受講後にやむを得ない場合のみ3種類以上が処方可能。
4) 2)についても日本精神神経学会認定専門医であれば研修受講後にやむを得ない場合のみ1年以上の処方が認められる。
また、特にベンゾに対する依存症は、依存症で最も治療が困難であるとも言われており、医原性の依存症と言ってもよいだろう。ここ10年ほどで医師になった精神科医や総合診療医の間では、ベンゾの処方は極力控えるように教育を受けてきており、新規にこうした問題を抱える患者さんは減ってきているのかもしれないが、多剤併用や依存症は「過去の遺物現症」であることから、20-30年ぐらいの長期的なスパンになるだろうと予想される。また、オレキシン受容体拮抗薬のような新規作用機序の睡眠薬の台頭も、中長期的な医原性薬剤リスク減少に寄与していくことだろう。