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48歳の女性。全身倦怠感を主訴に来院した。20年前からほぼ毎日、日本酒5合を飲酒している。6か月前に急性胃腸炎で入院した際にけいれんが生じたという。1週前から食欲不振、倦怠感と腹部膨満感が出現したため救急外来を受診し、入院した。

意識レベルはJCS I-3。身長 158 cm、体重 59 kg。体温 37.4 ℃。脈拍 108/分、整。血圧 122/78 mmHg。呼吸数20/分。SpO2 96%(room air)。眼瞼結膜は貧血様で、眼球結膜に黄染を認める。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部はやや膨隆し波動を認める。全身に発汗を認める。

血液所見:赤血球 247万、Hb 9.6 g/dL、Ht 28%、白血球 15,000、血小板 5万、PT-INR 2.1(基準 0.9〜1.1)。血液生化学所見:総蛋白 6.2 g/dL、アルブミン 2.6 g/dL、総ビリルビン 6.1 mg/dL、直接ビリルビン 3.4 mg/dL、AST 136 U/L、ALT 45 U/L、LD 362 U/L(基準 120〜245)、ALP 384 U/L(基準 115〜359)、γ-GT 223 U/L(基準 8〜50)、アミラーゼ 68 U/L(基準 37〜160)、クレアチニン 1.6 mg/dL。HBs抗原陰性、HCV抗体陰性。

対応として適切なのはどれか。2つ選べ。

a. 血小板輸血

b. ビタミンB群投与

c. ガンマグロブリン投与

d. 内視鏡的胆道ドレナージ

e. ベンゾジアゼピン系薬投与

解答:b. e. アルコール離脱症候群(いわゆる「禁断症状」)は、飲酒(つまり、アルコールの再摂取)によって改善するのだが、それでは何の治療的意味もない。では、何か代わりに投与でき、離脱症状が治まりかつアルコール摂取量も減らしていける薬剤はないかということで用いられているのがベンゾジアゼピン系薬剤だ。ベンゾジアゼピン系薬剤はアルコールと交差耐性(つまり、アルコールに似た作用機序)を持っているので、「替え玉置換」が理論上可能となっている。点滴ではジアゼパムが、経口薬ではやはりジアゼパムやロラゼパムなどが有名だ。
アルコール乱用によるWernicke脳症の予防でビタミンB1(実際はB6、B12も含むビタメジンという薬剤)を投与するのは、研修医になってから救急科ローテ中等で必ず1回は経験するだろう。上記ケースのような非代償性肝硬変の場合や低栄養などを認めた場合はWernicke脳症のハイリスク群であるのでなおさらだ。教科書的には意識障害、失調性歩行、眼球運動障害(水平性眼振)の3徴を覚えておけばいいが、全て認められることは稀である。

a. 血小板減少はたしかに認めるものの、臨床症状として出血傾向はなく、さらに肝硬変に伴った二次性の病態であるため、優先すべき治療方法でもない。病態階層としては、アルコール依存症>アルコール乱用>アルコール離脱症候群・アルコール性肝硬変>血小板減少となっていることに留意しよう。
c. 肝硬変によるガンマグロブリン上昇との引っ掛け選択肢と思われるが、肝硬変にもアルコール離脱にもガンマグロブリン投与はしない。
d. 肝胆道系酵素上昇はアルコール性肝硬変による病態であり、ドレナージの適応ではない。ドレナージは腫瘍等で胆管が閉塞している場合や、胆管結石による急性胆管炎などが適応だ。

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