7 歳の女児。就学してから 2 か月間、教師や児童と会話をしないことを指摘され、心配した両親に連れられて来院した。幼稚園でもほとんど発語はなかったが、身振りでコミュニケーションはとれていた。幼少時から現在まで、家族とは普通に会話しており、知的な遅れは目立たない。神経診察を含む身体診察に異常を認めない。
考えられるのはどれか。
a 吃音症〈小児期発症流暢症〉
b Tourette 症候群
c 学習障害
d 選択緘黙
e 素行症
解答: d
身近な家族がいる自宅では話すが、それ以外は話さないというように、ある場面に特化して話す/話さない状態があり、dが正解。他の疾患はすべて、場面によらず、どこにいても症状を有すると考えるとよいだろう。
なお、選択緘黙の英語はselective mutismで変わりはないが、今後は「場面緘黙」という和名で統一される。
場面緘黙は、本症例のように小学校にあがるタイミングで、学校教育への支障や懸念から医療に引っかかることが多いが、0.1%前後の有病率でそもそも稀であり、たいていは数週間や数か月以内に自然軽快するため、精神科・心療内科との接点もそこまで深くならない。社交不安症の家族歴があったり、同じような場面絨黙の兄弟がいることもよく経験する。