7 歳の男児。落ち着きのなさを心配した両親に連れられて来院した。学校の担任から、授業中じっと席に座っていることができず勝手に席から離れること、おせっかいが多く同級生の邪魔をしてしまうため喧嘩になること、忘れ物が多いことを指摘されている。自宅では後片付けや整理整頓が苦手だが、自分の好きなゲームには集中して取り組むことができる。外出時に車が来るのを確認せずに飛び出してしまうことがある。出生時に異常は指摘されなかった。乳幼児期の発達で明らかな遅れを指摘されたことはない。神経診察を含む身体所見に明らかな異常を認めない。
現時点で考えられる疾患について正しいのはどれか。
a 知的障害を伴う。
b 有効な薬物療法がある。
c 成人になると症状は消失する。
d 出生後の養育が発症要因である。
e 好ましい行動を褒めるよりも好ましくない行動を注意する。
解答: b
ADHDの典型的な症例である。どの辺が典型的かというと、
– 7歳(小学校に入ってから1-2年して)での来院
– 学校と自宅と外出時などの複数の場面での重大な支障が存在
していることだ。
ADHDに保険適応のある薬物療法には、アトモキセチン、グアンファシン、メチルフェニデート徐放錠、リスデキサンフェタミン(18歳未満のみ)の4つがある。
a. 知的障害を伴う症例もあるが、全てではない。
c. 成人になると多動症状は軽減することが知られているものの、不注意症状は残存することが多い。いずれにしても「消失」することはない。
d. これは明確にNOである。昔はADHDのみならず特にASD(Autism Spectrum Disorder: 自閉スペクトラム症)の子どもに対してこの仮説がはびこり、親御さんを苦しめていた負の時代がある。現在は明確に否定されており、生物学的な研究が進んでいる。
e. 誤り。逆が正解。好ましい行動を褒めて助長するべく、子どもの言動を「好ましい行動」「好ましくない行動」「危険な行動・許しがたい行動」の3つのいずれかに分類し、それぞれに対して型で対応していく行動療法の一種である。こうした行動療法を提供するのが子供の一番の理解者である親御さんであるという意味をこめて、「ペアレント・トレーニング」とも言われている。