76歳の女性。物忘れが多くなり、何度も同じことを尋ねるようになったことを心配した家族に付き添われて来院した。約1年前から軽度の意欲低下がみられていたが、ここ3か月間は食事を作るものの同じ献立を何日も連続して作るようになってきたという。
身体所見に異常を認めない。Hamiltonうつ病評価尺度4点(0点〜7点:正常)、Mini-Mental State Examination〈MMSE〉16点(30点満点)。頭部MRIで海馬の軽度萎縮が認められた。
この患者の機能評価に有用な検査はどれか。2つ選べ。
a. Rorschachテスト
b. 津守・稲毛式発達検査
c. 前頭葉機能検査〈FAB〉
d. 状態特性不安検査〈STAI〉
e. Wechsler記憶検査〈WMS-R〉
解答:c. e. 認知症のBPSDは前頭葉機能の低下を認めるのでFAB、中核症状として記銘障害があるのでWMS-Rが選べると良い。他の選択肢を除外していく方法もよいだろう。
a. 「統合失調症のおはなし」のページ冒頭に出てくるイラストがロールシャッハテストだ。「インクのシミ」で覚えよう。臨床では、経験を積んだ心理士か精神科医でないとできないので、外来で簡易的にやるスクリーニング検査ではない。
b. 親御さんや保育園の先生等に聴取する小児の発達検査。筆者は見たことも使ったこともない。幼稚園や保育園でのクラス評価や保育効果にも使われているらしい。
d. AnxietyのAが入っている。状況反応的な状態不安と気質的な特性不安という2側面から不安を測定できる。状態不安の推移を見ることも可能。