「周りの景色を見ても生き生きと感じられない。感情がわいてこない」と訴える患者にはどの異常があるか。
a 意 識
b 気 分
c 知 覚
d 見当識
e 自我意識
解答: e
こんなのわかるわけがない、と思った人はそれこそが正解、と言いたくなるほど精神科医でも解けない捨て問だ。ただし、設問のセリフは解離という症状に典型的なものであることは精神科医になればわかるので、解離が「自己同一性」の障害であり、心ここにあらずの状態により身体からの知覚に対して心(=内的精神活動)が連動していないことを理解していれば答えにはたどり着く。否、学生には酷すぎる問題だ。
a. 哲学的には一瞬この選択肢も正しそうに見えるのだが、これは医師国家試験だ。「意識の異常」という場合、医学的にはGCSやJCSでいうところの意識レベルを指すのが一般的であるため、誤りとしたい。
b. 本選択肢を回答した人が最も多かったのではなかろうか?気分というのは、本人にわいて起こった気持ちを指しており、気分の異常とはすなわち、「気分の落ち込み」や「気分の高揚」などの、既にわいて起こっている気分に対する質の異常を指す。この患者の訴えはそもそも「感情がわいてこない」とあり、「感情」そのものではなく、「わいて起こる」部分に異常があることに気づくと、本選択肢が誤りであることがわかるだろう。
別の言い方をすると、「わいてこない」というセリフ部分は気分そのものの異常ではなく、本来はわいてくるはずの気分がわいて起こってこないという異常を意味している。すなわち、五感を通じて入力(=これがc. 知覚である)した「周りの景色」に対して、感情をわき起こさせる本人の心身連携駆動力(=これをe. 自我意識と呼ぶ)の異常であると理解していただく良いだろう。
なお、「感情」は特定の気分をよりspecificなラベル名で充てたものである。ただし、本問ではそれどころではないので、あまり気にしなくても良さそうだ。
c. b.解説参照。
d. 見当識は十分にあるからこそこういった訴えが出るので誤り。