統合失調症を主な対象として、精神症状の包括的な評価尺度として使用されるのはどれか。
a Rorschach テスト
b 状態特性不安検査〈STAI〉
c リバーミード行動記憶検査〈RBMT〉
d Mini-Mental State Examination〈MMSE〉
e 簡易精神症状評価尺度[Brief Psychiatric Rating Scale〈BPRS〉]
解答: e
BPRSはPANSSの簡易版と捉えていただくとよいだろう。精神病症状の評価がその多くを占めているので、統合失調症が主な対象者である。精神科で実施する検査を総称して「心理検査」などと称するが、心理検査は国試精神科の沼でもあるので、例えば本問のうちMMSE(+長谷川式も)とBPRS(PANSS)ぐらいに厳選して抑えておくとよいだろう。
a. ロールシャッハも統合失調症を主な対象とするところは合っているのだが、インクのシミを用いた性格検査のひとつであり、患者の言語表現を通じて思考障害を見立てるのが目的である。従って、本問における「包括的」ではなく、「評価尺度」としての定量性や定性性にも問題があると指摘する専門家もおり、また検査手法に熟練の技術が必要で、サイエンスよりもアート色の強い検査である。
b. 「不安」とつくように、不安症あるいは不安症状に対する評価尺度だ。元々本人が持っている不安(特性不安)と状況反応的に生じる不安(状態不安)の2つが評価できる。
c. 国試的にはウェクスラー記憶検査(WMS-R)と同様RBMTも重要な記憶機能検査のようだ。筆者は実施の経験がないが、自賠責保険の等級のように定量的な線引を目的とする場合に施行される検査のようである。
それ以外は、臨床的によほど記憶障害の定量的評価を必要とするような状況でない限りはWMS-RもRBMTもお目にかかることはない。
d. 認知機能のスクリーニング検査。臨床ではまず長谷川式 or MMSEを用いて簡易的なスクリーニングを実施し、認知症等診断の補助情報とする。